ちーちゃん⑥
ちーちゃん⑤のつづきです。
抗生剤の治療+抗炎症用量でのステロイドで、ちーちゃんはどのような経過を
たどったのでしょうか。
入院して、初日から3日目くらいまでは2時間おきによだれと鼻水を拭かないと、
清潔な状態を保てないような状態でした。
しかし、4日目以降徐々によだれ・鼻水は収まっていき、半日に1度くらいの
清拭ですむようになりました。
また、点滴でプリンペランを入れていましたが、レントゲンで追っていくと、
同時期から胃にガスがたまらなくなっていきました。
(途中で胃腸運動改善のための別の薬も足しています)
ここまででは経過はよくみえるのですが・・・
ちーちゃんの見た目の状態(食欲低下・元気さ・目のうつろさ)は改善されませんでした。
おそらく感染のコントロールはうまくいっていますが、
原因は感染だけではなかったということでしょう。
5日目くらいで、感染の憎悪を覚悟で高容量のステロイドを打ちましたが、
全く症状は良くならず、食欲廃絶の状況も変わらずでした。
そうなると、おそらくステロイドに反応しないタイプの腫瘍が鼻腔に占拠していたのだと思います。
最終的に、ちーちゃんは入院して8日目で亡くなってしまいました。
本当に悔しい気持ちと、力になれなかった申し訳なさでいっぱいでした。
高齢の子に対してできることは、どうしても限られてしまいますが、オーナー様は
こちらが提案したできうる限りの治療をさせてくれました。
天国では元気いっぱいで遊んで、好きなものを食べて暮らしていてほしいです。
ちーちゃんの治療記録は以上となります。
ちーちゃん⑤
ちーちゃん④の続きです。
鼻腔内に何らかの病変があり、それが腫瘍なのか、もしくは感染か、
または両方か、今は分からない状態です。
また、ちーちゃん自身はひどい鼻汁と流延、開口呼吸を呈しています。
これからの治療をどうしていくのか。
治療の組み立て方ですが、これは獣医によってもかなり意見の分かれるところになってきますので、今回は私の意見をつづっていきます。
まず、感染に対しては抗生剤、炎症や腫瘍に対してはステロイドというのが基本となります。ただ、ステロイドは抗炎症にはもってこいですが、免疫力を弱めてしまう諸刃の刃のような薬のため、感染症を悪化させるリスクというのは十分にあります。
では、どちらを先に使うのか、それとも両方使っていくのか・・・
それぞれのメリット・デメリットを書きます。
①感染症が主な原因と仮定した場合
効果範囲の広い強めの抗生剤を入れていきます。(エンロ・ファロムetc)
メリット:感染症を抑えられる
デメリット:腫瘍が根本原因であった場合、効果なし また、腫瘍が根本にある場合、治療が遅れて症状進行する可能性大
②腫瘍が主な原因と仮定した場合
ステロイドを入れていきます。
メリット:ステロイドに効くタイプの腫瘍(リンパ腫etc)の場合、2-3日で劇的改善がみられることもあり
デメリット:感染症が主な原因の場合、より一層鼻汁が増えて呼吸困難に陥る可能性あり
ここで、ステロイドの説明をしていきます。
ステロイドは~1mg/kgで使用→抗炎症 2~4mg/kgで使用→抗腫瘍(抗がん剤的な使用方法)
用量によって用途が違います。
今回は、ひどい膿性鼻汁があることを考えると、高容量のステロイドでの治療は
危険と判断したため、まずは感染症の治療をしつつ、ステロイドを低用量で使用するという方法にしました。
感染症を起こしているのは確実なので、ある程度感染が落ち着いて、それでも状態が良くならなかったら、高容量のステロイドで試してみるという順序で治療方針を決めました。
ただ、この方法のデメリットとしては、腫瘍の場合治療が手遅れになる可能性があることと、もし感染症の治療で白血球が下がったとしても、その後白血球の上昇が見られた場合に、ステロイドの影響なのか、感染症がぶり返したのかが分かりにくくなってしまうということがあげられます。(ステロイドの使用で白血球は上昇してしまうため)
ここは本当に各病院や先生によっても意見の分かれるところで、診断を急ぎたい場合には、最初からステロイドを高容量で打つ先生もいれば、確定診断で何の腫瘍かがわからに限りはステロイドは使わないという先生もいます。
そこは完全に個人の裁量にはなってきますので、説明を受けたうえで、どうしたいかをオーナー様から伝えていただいたほうが、治療を決めていくうえでスムーズかもしれません。
それでは、この治療方針で、ちーちゃんの状態がどのようになっていったのでしょうか。
つづく
ちーちゃん④
ちーちゃん③の続きです。
ちーちゃんの鼻づまりの原因を探るべく、頭部のXrayもとっていきます。
普通の感染症では、猫が開口呼吸することはまずないです。
鼻腔から頭部にかけてなにか構造的な異常がないかも確認する必要があります。
結果・・・
左の鼻腔に比べて、右の鼻腔にほとんど空気が入っておらず、鼻腔内に
何らかの占拠病変がありそうなことが分かりました。
その占拠病変が、ただの膿性鼻汁なのか、それとも腫瘍OR腫瘍の浸潤病変
なのか・・・
Xrayで分かるのはここまでです。
ただの感染による膿性鼻汁であれば、感染のコントロールをすることで治療もうまくいくかもしれません。
ただ、もし感染でなく、腫瘍が原因なのであれば、治療は難しいかもしれません。
腫瘍が原因かつ、その腫瘍がステロイドに反応してくれるタイプのものであれば、
なんとか延命は可能ですが、もしそうでない場合は少なくとも1次病院でできることはほぼなくなってしまいます。
もし、腫瘍と確定したい場合は、MRIをとり、さらに病変部位の採取も行わなければならないため、どうしても全身麻酔が必要です。
ただ、今この状況で麻酔に耐えられる確率はかなり少ないため、それはおすすめはできません。
それでは今後どのように治療を進めていったらよいのでしょうか
つづく
ちーちゃん③
ちーちゃん②のつづきです。
ちーちゃんは、鼻の詰まりが原因で呑気をしている事がXray(レントゲン)で
判明しました。
では、鼻の詰まりを取る治療からやっていきましょう。
鼻の詰まりを取る治療では、まずは抗生剤の使用を考えます。
ちーちゃんの場合、外にも行く猫さんなので、とりあえず2w効果が続く
セフェム系の注射を打ちました。
抗生剤は菌を殺すお薬になります。
今、ちびちゃんは白血球の上昇がみられるため、おそらく菌の感染や
炎症が体内で起こっています。
この菌を殺す手伝いをするために抗生剤を打ち、白血球が下がってくれないか
経過を見ます。
次に、胃の中のガスをどう出していくかです。
胃の中のガスを出すには、胃の動きをよくしなければなりません。
そこで、胃腸の動きを改善させるお薬(プリンペラン)を打ちます。
また、ガスによって胃の拡張がある&低体温を考えると、体内の循環も
かなり悪くなっていることを考え、点滴も入れていきます。
血液検査の結果、電解質に問題はなかったため、一般的に生理状態に近い
ソルラクトを使用します。
これで、一度治療に対する反応を見ていくこととします。
・・・ここで、一番大事なこと、それはなぜ鼻が開口呼吸しなければならないほどに
詰まってしまったのか、次回はここに触れていきます。
つづく
ちーちゃん②
ちーちゃん①の続きです。
OW様の主訴では風邪っぽいとのことでしたが、
見た目はただの風邪とは思えないほど良くないものでした。
客観的評価としては、風邪症状(鼻水)に加えて、開口呼吸、流延、呼吸促拍です。
つまり、酸素がいきわたっていない&気持ち悪いような症状です。
また、時折意識が遠のいているような、どこを見ているのか分からないような
症状(神経症状?)もあります。
酸素がいきわたらないということは、肺野になにかある可能性もあるので、
Xrayを撮ります。
結果・・・
肺野に明らかな異常はありませんが、胃に大量の空気が溜まっていました。
これは気持ち悪くてなにも食べられないですね。
いわゆる呑気の状態です。
ではなぜこの呑気がおこってしまったのか。
これは、風邪症状によって、鼻が詰まってしまい、開口呼吸となって
たくさんの空気を飲み込んでしまったのが原因だと思われます。
とにもかくにも、まずはこの胃の中の空気を抜いていく治療&
鼻の詰まりを取っていく治療が必要です。
(つづく)
ちーちゃん①
こんにちは。
これからは、私の診ている子の治療経過をつづっていきたいと思います。
まずは患者情報から!
名前:ちー
年齢:高齢
性別:去勢
種別:ねこ
主訴は風邪っぽい症状がある&おしっこがでない&食欲不振。
もともと外にもでている猫ちゃんで、おうちと外とを行き来しているため、
おしっこが本当に出ているのかは分からないとのことです。
まずは、尿がでているかのチェックから!
雄なので、尿道カテーテル(3Fr←1番細いやつ)を入れていきます。
ここでカテーテルが通れば少なくとも尿石は詰まっていない&3Frが入るくらいの
隙間はある(尿道が狭窄していない)ということになります。
結果は・・・
全然普通にカテ通りました!
これでおしっこがでていない尿道閉塞ではないことを確認できました。
また、その後自力での排尿も見られたため、尿関係はひとまず安心。
尿検査をしている間に、血液検査を回します。
血液検査の結果は・・・肝臓と膵臓の値が少し上がっているのと、白血球が多めに出ています。
これだけなら、風邪の治療をしてお返し・・・なのですが、
この子の見た目の状況は、お返しをできる状況ではありませんでした。
(つづく)